2011-03-27
ロボットがほしくて、チューインガムをいっぱい買ってもらいました。
焼肉屋の出口でガムをもらって、不意に思い出しましたが、ガムをそれだけたくさん噛んだのは、人生のなかでも、小学生のその時期だけだと思います。
憧れのロボットとはぜんまい仕掛けのおもちゃ、一応二足歩行もでき、とあるチューインガムの景品でした。
ガムの包装紙の裏に、中国民間伝説「七世夫妻」に登場する男女キャラのどれか一人が印刷され、アベックになる2枚を揃えてメーカー送れば、景品のロボットがもらえる仕組みです。
いま考えると、そのロボットも格好良いか微妙ですが、時代が時代で、僕が台湾で小学生をやっていた頃、クラスの男子みながこの景品をほしがっていました。
ですが、そこは「七世夫妻」、玉帝の怒りを買っているだけに、そう簡単に結ばれるわけはありません。
例えば梁山伯はよく出ますが、祝英台はなかなかお目にかかれないように、必ず片方はレアで、めったに現れないようになっていたと覚えています。
「七世夫妻」は中国でよく知られていますが、主役は本来天上界にいる金童と玉女、咎められて凡世に下り、七度も輪廻転生を繰り返しながら、毎回毎回結ばれない悲恋を繰り返す話です。
輪廻転生の恋物語は時々見ますが、先鞭をつけたところもそうで、前後二千年を渡り、七世代も繰り返すのは、さすがにスケールが大きいと言わざるを得ません。
さて、七回の輪廻転生で思い出したのは、能劇の「大般若」です。
話はすこぶる単純で、元は「西遊記」の古い稿本のひとつだと思います。
大般若経を求めて天竺を目指す三蔵法師が、流沙河にて深沙大王に出会いましたが、「汝の前世さきの世も、此の大願を起せしかども、遂に叶わで此の河の主に悩まされ、命を捨てしも七度なり」と前シテの翁が言うように、なんとすでに三蔵は前世七度までも、取経の旅に出ながら深沙大王に食われてしまったものです。
それもなおもめげず仏法を広めようとする三蔵法師の固い意志とともに、深沙大王の、三蔵の七つの髑髏を瓔珞に首に掛けるイメージは、目眩を起こすほどでした。
「七世夫妻」のガムは、あるいは地域によって出やすさが違っていたかも知れません。なかなかそろわずにして諦めかけた頃、たまたま旅先で買ってもらったガムに馴染みのない范喜良が登場し、めでたく孟姜女とゴールインさせることができました。
それで有り難い経典を、ではなく、例のおもちゃのロボットを首尾良く手に入れ、同朋にも若干自慢することができました。
後に、「新・七世夫妻」で同じようなキャンペーンが行われた記憶もかすかに残っていますが、高学年になったせいか、それとも新しい景品はあまり魅力的でなかったせいか、ガムを買ってもらうようにねだることはもうなくなりました。
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