鱗のある身体はワニ、背骨は魚、尾は蛇、鼻ずらは豚
2010-05-03


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 ネットで検索したら、恐らく乾期の葉が落ちているバオバブ並木を撮った、とても美しい写真が見つかりました([URL])。
 バオバブだけではなく、下には横飛びサルとカメレオンの写真も収められています。観光客向けのガイドブックによると、バオバブと原猿類、そしてカメレオンは、マダガスカルの三名物です。

 上の写真は前回のバオバブ同様、僕の小学生時代のコレクション、1973年版のカメレオン切手の一部です。


 カメレオンという名前は、古典ギリシャ語そしてラテン語に始まるようで、レオンは獅子、カメは「地上の」を意味するそうです。現在の英語やフランス語、そして日本語に至るまで、ほぼそのまま引き継がれていますが、地上を這うライオンと言われても、どこがライオンなのか僕にはピンと来ません。そもそもライオン自体も地上で生息する動物ですし。

 中国語では俗に「變色龍」と呼び、カメレオンの特徴である体色の変化をストレートに表して、わかりやすいです。
 平原毅の「英国大使の博物誌」を読むと、「カメレオンの体色は変わるといっても、どんな色にでもなれるわけではない。」だそうです。「私がモロッコのカメレオンを観察した限りでは、緑色と茶色系統の色はかなり自由に体現することができ、橙色、黄色、萌黄色、ベイジュとなるし、黒となることも白灰色になることもある。しかし、青系統の空色や紺色にはなれないし、桃色や紅や赤色にもなれないようだ。」
 そして、「環境によって体色を変えるのも事実だが、自分の感情によっても体色が変わる。」だそうです。

 奥本大三郎の随筆にも、その実例が挙げられています。
 「二匹のカメレオンを樹上で対決させてみた。マダカスカルでのことである。現地の人によれば雄と雌だ、とのことであったが、雌がカーッと逆上するように、全身灰色からレンガ色に変色したので驚いた。こういうふうに雌あ派手な色に変化するのは、雄が気に入らないときであって、拒否の印であるという。」


 大プリニウスの「博物誌(Naturalis historia)」には、「アフリカにはカメレオンも産するが、インドにおけるほど多くは産しない。」と書いています。実際のところ、カメレオンに関しては、世界の6割の種類がここマダガスカルに生息していると現在は言われ、二千年前の博物誌は、マダガスカルまで包含できていなかったかも知れません。

 澁澤龍彦の「私のプリニウス」を引くと、プリニウスは以下のように続きました:
 「カメレオンは形も大きさもトカゲのようであるが、足はまっすぐでトカゲより長い。魚と同じく横腹と腹の区別がなく、背骨も魚のように突き出している。身体はずっと小さいけれども、その鼻ずらは豚のそれによく似ている。尾はきわめて長く先が細くなり、蛇のようにくるくる巻いている。爪は鉤状に曲がり、運動はカメのように緩慢で、鱗のある身体はワニのように......」
 「しかし何よりも驚くべきは、その体色の変化であろう。実際、カメレオンhしばしば目や尾の色、あるいは身体全体の色を変えるのであり、自分のそばに接近するものとそっくり同じ色になるのだ。但し赤や白にはならない......」
 「動物のなかで飲んだり食ったりしないのはカメレオンだけで、空気以外のものを口にしないのである。」

 古代ローマの博物学者、よく観察されていると見るか、デタラメを書いていると見るかは、読み人それぞれの自由です。僕としてはおもしろかったし、この程度の誤記でいちいち顔色を変えることもないかな、と思います。

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