【メモ】マグレブとクスクス
2016-05-15


「マグレブ」はアラビア語で「日の没する地」、「西方」を意味するそうです。
 バグダードを出発して西に侵攻した7、8世紀ののアラブ軍団は、ジブラルタル海峡を過ぎ、大西洋に達すると、そこから先にはもはや征服すべき土地がなくなったことに気づき、「日の沈む西方の地の果て」という意味で名づけました。現在モグレブと呼ばれるのは、主にモロッコ、アルジェリア、チュニジアの三か国です。元々ベルベル人の居住地ですが、いまマグレブの人々はアラビア語を話し、主にイスラム教を信仰し、人種的にもアラブ人との混血が進んでいます。

 マグレブ文化の中心地であったモロッコの町は、北アフリアで一番洗練された料理を作る場所として知られ、モロッコの宴会料理はバステーラという円盤状のパイから始まり、マグレブの代表的な料理であるクスクスに終わることが多いようです。

 クスクスはどうやらアラブ侵入以前からベルベル族の伝統料理として存在したものです。
 クスクスには作るための専用の二段式蒸し鍋が存在します。
 手元の「地中海事典」(地中海学会、三省堂)によれば、小麦、大麦などのあらびき粉を大きい平鉢にとり、水とオリーブオイルを手のひらで転がしながら混ぜ、鍋の上段に入れます。下の鍋で羊や鶏、牛などのシチューを煮込み、その蒸気で上段のクスクスを蒸し、15分くらい蒸すとまた平鉢にあけ、篩にかけながら水と油を混ぜることを三回ぐらい繰り返し、食べるときは下段のシチューをかけて食べるそうです。

 「食の文化地理 〜舌のフィールドワーク」(石毛直道、朝日選書)によれば、小麦、大麦のほか、トウモロコシ、ドングリの粉で作ったもの、乾いたパン粉をクスクスとして使用することもあります。また、下鍋のシチューは羊、ヤギ、ラクダなどの肉、あるいは魚、それに野菜を入れ、イスラム教の安息日である金曜日に作る料理であるそうです。

 「月刊 言語」の1980年Vol.9が手元にあり、中野暁雄の「モロッコ食物誌 (あるアラブの娘さんからの聞き書き)」が掲載されて、当然クスクスを取り上げています。
 下鍋の肉は普通の牛肉か牛の頭か尾の肉、もしくは鶏が普通だそうで、食べるときは手で団子のように丸め、さじは使わないそうです。また、クスクスは金曜や日曜に作り、マグレブらしい、はれの感じのする料理、だと書いてあります。
[読書・本]

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