2012-02-28
わが国最古の私立図書室、もしくは最初の公開型図書館とされているのが、奈良時代後期の石上宅嗣によって設置された「芸亭院(うんていいん)」だそうです。
ウィキペディアを調べると、平安時代初期の「続日本紀」に、宅嗣の業績とともに「芸亭」の創設経緯が転載され、その頃は「芸亭」がまだ存続していたようです。
また、この「芸」(ウン)は、現在でも中国で使われている漢字で、日本で使われている芸術の「芸」(ゲイ)とはまったく別文字、ともあります。
「芸」(ウン)は「くさぎる」(雑草を取る)、「ヘンルーダ」(書物の虫を防ぐのに使う香草)の意であり、「芸亭」の名はこの「ヘンルーダ」の意味からきている、とウィキペディアにあります。
「ヘンルーダ(Common Rue)」はミカン科の植物で、この項のウィキペディアにも「漢字では芸香(うんこう)と書き、しおりに使うと、本の虫食いを防ぐ」なる記述があります。
確かに中国も昔、書斎を「芸閣」、「芸窓」などと呼んだりするのは、目にしたことがあります。
しかし地中海原産の「ヘンルーダ」は、はたして古代の中国にあったのでしょうか?
「芸閣」などの「芸」は、ゲッキツ(月橘、Murraya paniculata)ではないかと、考えています。
李時珍の「本草綱目」では、「芸,盛也,此物山野叢生甚多,而花繁春馥,故名。」と記されています。
ゲッキツはインドの原産らしいですが、台湾に住んでいた頃もよく見かけ、南アジアでは広く生息しているようです。
宋の時代の沈括(沈存中)が、「夢溪筆談」という著作のなかで、「古人藏書辟蠹用芸。芸,香草也,今人謂之七裏香是也。」と書いています。「月橘」はいまも「七里香」と呼ばれていますが、「七裏香」は「七里香」に通じると考えられます。
もっとも、「ゲッキツ」も「ヘンルーダ」と同じ、やはりミカン科の植物で、大きくかけ離れているわけではなさそうです。
セ記事を書く
セコメントをする