フグのエキス
2009-05-08


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 大型連休の最終日、雨の中、子供を連れて江ノ島の水族館に行って来ました。

 フグが泳ぐ水槽の前に、若いカップルが談笑していました。
 「いつも思うけど、なんで河豚は海なのに、漢字は『河』と書くのかな?」
 「川にもいたりして」
 「いや、それだけはないよ。『海』で書くと、確かにイルカになってしまうよね。」
 「そうだっけ?イルカとフグは一体どこが似ているかな?」


 イルカとフグのどこが似ているかは置いとくとして、「それだけはない」というのはウソで、大陸の大きい川にフグが捕れることだけは間違いないです。

 「本草綱目」に河豚は江淮河海に皆あると言っているから、古来より、長江にも淮水にも黄河にもそれぞれいるはずです。
 ネットで調べると、河豚は「長江三鮮」のひとつに数えられ、中国では長江産のものが一番有名だそうです。しかし江豚と呼ばず、河豚だと名付けたところ、その昔は黄河産のものが有名だったかも知れません。


 いずれもしても、台湾Yahooの質問回答([URL])に、「全球只有日本人吃河豚,而且視為河豚是珍〓。」とあるのは、きっと間違いです。
 少なくとも中国人は昔から食し、東坡居士の「正是河豚欲上時」もあれば、梅堯臣の「河豚当是時 貴不数魚蝦」の詩も知られています。

 日本だけでなく、エジプトにもフグを捌くための免許が存在するらしいです。
 中国はどうかはわかりませんが、数百年前にはさすがにないでしょう。
 むかし当ブログで陳維ッの詩を引用した([URL])ことがありますが、清の大詩人・陳維ッは河豚を食って中毒し、「顔も目も腫れ上がって弁識できないほど」だと、王漁洋という人が「居易録」に記しているそうです。
 このくだり、青木正児が著書の「酒の肴」に書いてありますが、青木正児は下関の生まれで、河豚(「フク」と、濁らず書いた)にはそれなりのこだわりがありそうです。


 さて、「毒の話」(山崎幹夫、中公新書)によれば、フグ毒の中毒は早い場合は20〜30分、通常は3〜6時間で発症します。中毒症状はまず頭痛、めまい、胸苦しさを感じ、動悸が激しくなるそうです。
 毒成分テトロドトキシンの人での致死量はなんと0.5〜2ミリグラムだけで、比べても意味はないですが、言ってみれば青酸カリの百分の一以下です。

 うえの写真は、江ノ島水族館の売店で購入した土産の「河豚せんべい」です。

 フグの味はしない(というよりフグの味は?)ですが、成分を見ると、ちゃんと「フグのエキス」というのが含まれています。
 フグのエキスってなんだろうかと考えているうち、まさかですが、ちょっとめまいがしてきました。
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