先日、古代史の通訳についてのメモを載せた(
[URL])ら、whyさんから、江戸時代の通事や通詞に関するコメントを頂きました。
たまたまちょっと前に「西説伯楽必携」なる書物を調べていて、江戸時代の阿蘭陀通詞が登場してきましたので、併せて概要をメモしておきます。
・江戸時代の翻訳といえば、鎖国と同時に誕生し、開国と共に終焉を迎えた阿蘭陀通詞が重要な地位を占めていました。
・1729年、阿蘭陀通詞の今村源右衛門(今村英生)による「西説伯楽必携」というと分厚い翻訳書ができあがっていましたが、日本初の本格的な西洋書の翻訳だと見ている研究者が多いです。
・8代将軍吉宗は西洋馬の輸入に熱心で、その関係で馬術師のハンス・ユンゲル・ケイゼルが1725年に来日し、御前で乗馬や射撃を披露し、西洋式馬術、飼育法、馬の病の治療法を伝授しました。
・今村源右衛門は若い時に長崎の出島の医師ケンペルの助手となり、新井白石のシドッチ尋問に関わり、その後吉宗の時代に大通詞として重用された人物でした。「西説伯楽必携」は翻訳と、源右衛門が直接ケイゼルに聞いたことをまとめたものだそうです。
蘭学の先鞭をつけたのが、西洋馬術、馬医関係の翻訳本だというのは意外ですが、たまたま必要に迫られていただけかも知れません。
ちなみに、かの有名な「解体新書」より半世紀も古いです。(あまり関係ないですが、1852年には題名が一字違いの「解馬新書」という馬医書も、菊池東水より記されています。)
さて、題名の「西説伯楽必携」のなかの「伯楽」ですが、元々「星経」には「伯楽、天星名、主典天馬」とあり、天にいる馬を司る星の名前だそうです。
日本語には古くから伝わり、「博労」、「馬喰」(ばくろう)も「伯楽」から転じた言葉だそうです。
古文書に「伯楽をはくらうとよみたるはよし、誤るにあらず」とあるにはありますが、いまに「名伯楽ですね」と言えば、馬を扱う人にとってこのうえにない賛辞になりますが、語感と当て字が悪いせいか、「最高の馬喰ですね」というとまず怒られそうです。
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