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　電車の中、読みかけの小説を、ようやく最後までめぐったので、簡単に感想ならきものを。


　この時代小説、重要な登場人物である酒部隼人、藤堂兵太と大手荒之介は、いずれも下級武士ながら、なかなかの剣の使い手です。
　しかし、読み進んでわかったんですが、物語の骨子はれきっと恋愛小説です。
　特にヒロインの千里が酒部隼人から大手荒之介に、心が揺れ動いてゆく、その不思議な心理の綾についての描写がメインだったかも知れません。

　それと、やはり忘れがたいのは、酒部隼人が戦場で死すあたりのシーンです。

　強引さを併せ持つ、生意気で若々しい大手荒之介と比較すると、深い愛情を抱いていながらも、どこか表現のすべがわからない、積極的に出れない酒部隼人は、感情移入できました。
　大人数の合戦のなか、腕の立つの立たないのはほとんど関係ないぐらい、個人の無力さが浮き彫りされた描き込みようは、さすがにうまいです。


　この文庫本は、先日、小田原かもめ図書館のリユーズコーナーで頂いたものです。
　次の読者に回せるように、今度行くときはまた戻したいと思います。