沸き上がった感情のまま、あえてすぐに文字とせず、10日の期間を置いてみました。
そして、改めて確信しました。
8月25日土曜日、後楽園ホールで目撃したあの1戦は、確かに歴史的な名勝負、大熱戦に違いないことを。
まず、先日の記事(
[URL]は、1カ所間違いがありました。
知らなかったんですが、ワンロップ・ウィラサクレックは負傷のために、急遽同ジムのカノンスックが代打で、最終第9試合で大月選手と闘うことになっていました。
このカノンスック選手は映像も含めて初見ですが、負けん気の強いところが感じられ、ムエタイ選手らしいヒジ、ミドルと併せて、準備期間の不足はあるかも知れませんが、決して悪い選手ではありませんでした。
試合後に、大月選手が「俺の方がほんの少し運が良かっただけです。」と言っていたが、確かに双方消耗したなか、うまい具合に左フックをクリーンヒットして、一気に大勢を決しました。
しかし、相手の一瞬の隙を突けることと、その後チャンスを逃さずラッシュできたことは、やはりさすがに大月選手だと褒めるべきでしょう。減量はつらいかも知れませんが、トーナメントを辞退したりせず、優勝をめざしてほしいです。
トーナメントの目玉選手のひとり、村浜武洋は、この階級でも身長の低いことは変わりません。出入りの速いステップがやや影を潜め、パンチのクリーンヒットもあまりなかったが、一方で防御の技術と打たれ強いところは見せました。
相手の石川直生、前蹴りで自分の距離を作り、接近戦ではヒザでプレッシャーをかける作戦だったようです。全体的に、緊迫感はりましたが、そのまま双方決め手がなく、そのまま最終ラウンドまで流れたような感じです。
結局、石川選手が僅差の判定勝利を収めましたが、試合を見た感触としては、ほぼ互角だったと思います。
で、なんと言っても、この日で最も盛り上がった試合、というよりここ十数年間現場で見た試合のなかでも、最高と思えるぐらいの熱戦が、第8試合の前田尚紀 vs 梶原龍児戦でした。
JNネットワークなどで旋風を巻き起こす龍軍団(チーム・ドラゴン)、そのなかでも大将格の梶原選手が颯爽と登場したと思えば、相手の老舗・藤原ジムの前田選手はスポーツ刈りの、飾り気のない修行僧のような風貌でリングに上がってます。
まず、伸びのある右ストレートと、ややオープン気味で左右のフックを打ち分けるボクシングのうまい梶原選手が、やや先手を取ったように見えました。しかし前田選手も決して下がらず、パンチと右ローをひたすら返して、息つく暇もない熱戦に導きました。
第1ラウンドですでに大きな歓声を博した両選手でしたが、さらに万位の観客を興奮のるつぼに引き込んだのが第2ラウンドです。
梶原がカウンターのフックでダウンを先取すれば、前田もローでバランスをくずして追撃のパンチでダウンを奪い返しました。
パンチの撃ち合いになれば負けないのが、元ボクシング東洋太平洋ランカーの梶原選手で、右フックで2度目のダウンを奪い、再びペースを握り戻す。
ダメージありありで、あと1ダウンでKO負けになる前田選手は、しかしそこから驚異の粘りを発揮しました。なんと逃げるどころか、ふらふらになりながら、まったく休まずに真っ正面から打ち合い、逆に梶原を棒立ちさせたほどでした。
あまりの熱戦で、地鳴りと思わせる大歓声とストンピングが巻き起こし、場内がなんとも言えないすごい雰囲気になっていました。
一瞬の大反撃で場内が沸く試合なら、いままでも何回か見てきました。
それが、この試合の場合、そのあと第3ラウンド、第4ラウンドへと、歓声がまったく止むことなく、ずっと続いたのだから、すごいです。
両選手とも消耗しきっているはずなのに、テクニックと不屈の闘志がぶつかり、休むことを知らない死闘が延々と続いてました。
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