2006-09-17
本を整理していたら、夾んでいる古いものが飛んで出てきました。
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< わだち >
陽は沈み冬の荒原の果て
ただひとつの馬車の黒影はゆく
凍てつく寂寥にカツカツと鳴り
しめやかに細く馬車のわだちはつづく
馬は首をたれ足並み重く
この馬車には鈴がない
かすかな夕映えに黒影はくらく
この馬車には灯火がない
この馬車には御者がない
カツカツとまたしめやかに荒原の幻想は行く
−寂寥よ
はたして私は生きて来たのだろうか
( from "海 長沢延子遺稿集", 1992.1.15 )
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確かに大学の図書館から借りた本を写したものです。若くして自殺した女の子の作品で、当時結構心を打たれました。友人への手紙にも話題にしていた記憶が残っています。
いまになって考えると、成熟しきれずに夭折したことに対し、どうしても厳しい採点をしてしまう自分がいます。
が、もしかして、単に自分にはすでそのような批評をする資格がなくなっただけです。瑞々しい感性を持つ若者だけが理解・共感できる、若さゆえのなにかがあるかも、そのような気もします。
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